「Makuake」はなぜ支持されている?そのカギは「想いの共感」にあった!
2022年7月15日(金)、REACH REACH事務局はMBSのちゃぷらステージにて、セミナーを開催しました。その様子をREACH REACHライター 粂田(株式会社Penseur)がレポートします。
今回のセミナー講師は、株式会社マクアケの共同創業者兼取締役の坊垣 佳奈さんです。主に応援購入サービス「Makuake」のキュレーター部門、広報、流通関連などの責任者として従事されており、広告賞ACC賞の審査員や企業を目指す学生のサポート、ニュース番組のコメンテーターなど幅広い領域で活躍されています。
今回は「Makuakeに学ぶ共感を生むストーリー作り」と題し、ご自身が培われたブランディングやプロモーションのコツについてお話いただきました。
参加者の中には、会員社の皆さまのほか、企業を志す学生の方も何名か見受けられました。
「Makuake」は生産者の想いを消費者に届けるサービス
まずはMakuakeの事業紹介からスタート。Makuakeは、寄付や資金調達の目的に近いクラウドファンディングサービスのイメージが先行している中「実は新しい体験や商品を応援購入できるECに近い存在です」と語る坊垣さん。ただ、大手ECサイトは「早く」商品を届けることに特化する反面、Makuakeは、消費者が作り手の想い思いやこだわりを知った上で商品購入できる点に重点を置いているといいます。
このサービスの企業側のメリットは、在庫を抱えない状態で新しい商品を生み出せること。また、サステナブルの観点でも大きな利点です。
さらに消費者からすれば「自分が購入する商品が、どんな想い思いを持って、どのように作られているか」を知れるため、より納得感を持って買い物ができるとのこと。
これらの利点が評価され、Makuakeのサービス開始から9年経った現在ではユニークアクセスユーザー数が1400万を超え、さまざまな業界と消費者に活用されています。
【取材チームの所感】
Makuakeのビジョンである「生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界の実現」は、当時の社員全員で考えたのだとか。企業の指針と事業内容が合致しているので、社員の団結力も生まれやすく、サービス成長にもつながるのだと感じました。
想いが人を巻き込み、共感を呼ぶ
坊垣さんは、Makuakeの成長を通して、人を動かす際に最も重要な要素は「想いへの共感」だと気付いたそうです。後半では、坊垣さんの著書『Makuake式 「売れる」の新法則』から重要なポイントをかいつまんで「共感を呼ぶサービス・プロダクト」についてのお話が展開されました。
・まずは自分の「やりたい」が重要
坊垣さんは、マーケティング調査だけを基にモノやサービスを生み出すと、似たようなものがどんどん生まれ、競合優位性を見出しにくくなる、と語ります。「マーケティングはもちろん重要だが、その上で「自らの中にある信念や課題」を軸にモノづくりを行うと、オリジナリティの高い商品・サービスを生み出せる」とのこと。
その際は「内的モチベーション(自分がやりたい)」、「世の中に求められている」「自らが属する組織に求められている」の3点が交わるものを見つけるといいそうです。
・基礎の上に独自性は成り立つ
続いては、「うまくいくブランドは2階建てである」というお話。ここでいう「1階」は基礎、「2階」は独自性を指します。例えば飲食店であれば、1階は「おいしい」「衛生的」などの基礎的な要素。坊垣さんは「これをクリアした上で、店のオリジナリティを表現することが重要」と話します。
・本格化するサステナブル
さらに坊垣さんは「サステナブル」も共感作りの重要な要素だと語ります。これにはテレビや新聞などのマスだけでなく、SNSなどのITが発達したことで、「受信者」のみであった人々が「発信者」として情報に関わっていることが影響しているそう。「SNS上で議論が生まれ、物事の透明度が増すことにより、自身が大量生産・大量消費という「負」となる取り組みに加担していないか、皆が意識するようになったのでは」と話します。
実際に、ある有名アパレルブランドは、これまでの大量生産のスタイルから「これからはMakuakeを使って誰が何をほしいかをリサーチした上で、本当に必要な商品だけを生産する」流れにシフトチェンジしたいと考えているそうです。
セミナーの内容を深堀りする質問が続出
セミナー後は、MBS総合営業局の榛葉(しば)健氏とのトークセッション形式で、皆さまの質問に答えます。
もともと親交が深いお二人ということもあり、トークは初対面時のエピソードや坊垣さんの家族の話などを時折交えた和やかな雰囲気の中、進行されました。ここで、参加された皆さまの質問と、坊垣さんの返答をいくつかご紹介します。
坊垣さん「Makuakeでは『理解することを諦めない』という言葉を大切にしています。社内で意見の食い違いが起きたときはどちらかが妥協するのではなく、双方の考えを理解・尊重した上で、落としどころを熟考するという意味です。私はこれを『合わせみそ理論』と呼んでいて。赤みそと白みそ各々の違った意見を持った人同士で意見が衝突したときは、赤でも白でもない「合わせみそ」の答えが見つかるまで話し合うようにしています。ポイントは、相手の発言には必ずその人なりの背景があるので「なぜこう思うか」まで聞くことですね。」
坊垣さん「オリジナル商品やサービスを提供する場合は、概要が世の中に伝わりやすいよう、より伝え方を工夫するべきだと思います。例えば私がMakuakeの概要を伝える際、企業の方には「商品が一次流通する前にテストマーケティングとして使える0次流通」の場だと説明し、個人の方には「応援購入サービス」と伝えていました。
Makuakeのサービスは「クラウドファンディング」だけでは表現しきれないし、伝わりにくい。だからまずは相手に興味を持ってもらえるような言葉選びを心掛けました。」
坊垣さん「広報の責任者の視点からお話させてもらうと、プレスリリースは「想像力」を膨らませて書くことが重要です。たくさんプレスリリースを見ている記者の方は、どういう表現・順番で書けば「取材したい」と思えるのか。とにかく想像することで、いいプレスリリースが書けると思います。また「想像力」は、マーケティングやプロモーション、商品開発など広報以外のどの仕事でも重要だと思います。」
まとめ
坊垣さんは、自身のお父様も仕事人間だったことから、幼いころから「仕事は面白いものだ」と認識していたといいます。「私は、サステナブルという言葉を何十年も前に父から初めて聞きました。時代の先を読んでいた父の考え方や仕事の向き合い方には強く影響を受けているし、年を重ねるたびにより濃くにじみ出ているように思います」と語ります。
今回のセミナーでは、マーケティングやプロモーションのノウハウに加え、坊垣さんの「仕事への想い」も強く感じられました。